DXはOAだけじゃない CIMからERPを経てIT/OT融合でFA視点も統合する時代へ
――FA視点を欠いたDXは、今も昔も“半分”のまま
はじめに:DXの話題はなぜOA寄りなのか
DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉は、ここ数年で急速に広まりました。
しかし、その事例や議論の多くはOA(Office Automation)――RPA、チャットボット、クラウド業務システム――に偏っています。
確かにOA領域の改善は効果が見えやすく、導入もしやすいですが、これだけでは企業全体の変革には届きません。
DXの定義は本来、製造や物流、保守など現場領域――つまりFA(Factory Automation)――も含みます。FA的視点を欠いたDXは、今も昔も“半分のDX”に過ぎません。
第一幕:CIMが描いた「統合」の夢(1980〜90年代)
1980〜90年代、日本の製造業では**CIM(Computer Integrated Manufacturing)**が盛んに提唱されました。
CADで設計したデータをCAMに直結し、生産管理、在庫、出荷までをコンピュータで一元管理する構想です。
狙いは、リードタイム短縮、品質向上、在庫削減。まさに現場のDXとも言える内容でした。
しかし当時はネットワーク速度や標準化が不十分で、異なるメーカーの機器連携も困難。CIMは理想的なコンセプトであった一方、完全実現は難しく、多くが部分導入に留まりました。
第二幕:ERP/ERMで全社統合へ(1990年代後半〜2000年代)
90年代後半になると、統合の対象は製造現場から企業全体へと拡大します。
登場したのがERP(Enterprise Resource Planning)、そして**ERM(Enterprise Resource Management)**という概念です。
ERPは生産管理だけでなく、会計、人事、購買、販売など全社の経営資源を統合管理。
ドイツのSAPや米Oracleのシステムが世界的に普及し、日本でも大企業を中心に導入が進みました。
この時代、OAとFAは同じERP基盤にデータを載せる方向に動き、CIMが目指した「製造と管理の一体化」が一歩進みます。
しかしERPも万能ではなく、現場制御やリアルタイム性は弱いまま。情報は統合されたものの、“ITと現場(OT)の距離”は依然残っていました。
※OT(Operational Technology)は、工場内のFAだけでなく、自動運転車や都市インフラ、医療機器など、あらゆる物理的システムの制御を含む広い概念です。
第三幕:DXとIT/OT融合(2015年〜現在)
2010年代後半から現在にかけて、クラウド、IoT、AI、5Gなどの技術が急速に発展しました。
この環境変化により、ERP時代には難しかった「リアルタイムなITとOTの融合」が可能になっています。
- OA領域:クラウド会計、RPA、データ分析
- FA領域:IoTセンサー、ロボット、AGV、デジタルツイン
- 融合例:受注データが即座に工場設備に反映され、生産計画が自動更新
これはまさに、CIMが夢見た全工程統合の現代版であり、ERPの全社統合にリアルタイム性と外部連携を加えた進化形です。
なぜFAは今も軽視されがちなのか?
- 発信主体の偏り:DX情報はITベンダーやコンサルが多く、OA領域に焦点が当たりやすい
- 技術ハードル:FAは制御工学や機械知識が必要で説明しにくい
- “自分ごと”感の欠如:非製造業はFAを自分に関係ないと誤解しやすい
FA的DXは製造業以外でも機能する
- 物流:倉庫ロボット、在庫自動更新
- 小売:POS連動の自動発注・陳列
- 建設:重機の遠隔操作、ドローン現場監視
- 農業:自動収穫機、環境センサー
FA的発想は工場だけでなく、「現場を持つすべての業種」に通用します。
おわりに:歴史を知ればDXの全体像が見える
CIMはFA中心の統合、ERP/ERMは全社統合、DXはIT/OTのリアルタイム統合――呼び方も技術も変わりましたが、「情報と現場を結び、全体最適を実現する」というゴールは同じです。
FA視点を欠いたDXは、過去も現在も未完成。
次にDXの話題を耳にしたら、それがOAだけなのか、FAを含むのか、そしてIT/OT融合まで踏み込んでいるのかを、ぜひ見極めてみてください。
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