「ウェブ関連費」の規制の背景と、地域経済活性化への方針転換

2024年7月24日 2025年4月13日

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小規模事業者持続化補助金は、小規模な事業者が販路を拡大し、売上を向上させるための取り組みに活用できる補助金制度です。最近では特に「ホームページを作成する費用に補助金を使いたい」という相談が非常に多くなっています。しかし、現在ではウェブサイト制作費など「ウェブ関連費」については、補助申請額全体の4分の1まで（通常枠で最大12.5万円、特例枠で最大50万円まで）という規制が設けられています。

なぜウェブ関連費に規制が導入されたのか？

かつてはホームページ作成費用を全額補助金の対象とすることが可能でした。しかし、ホームページ制作は、制作費の適正価格や成果物の価値が非常にわかりにくいため、一部では実際の相場を大幅に上回る金額を請求し、その差額を現金で事業者に返金するような不透明な取引が問題視されました。

小規模事業者持続化補助金の補助率は原則3分の2（約66%）です。例えば、100万円の事業費なら約66万円は補助され、残り約33万円は自己負担となります。しかし、不適切なケースとして、本来は60万円程度で制作可能なホームページにもかかわらず補助金の上限100万円を請求し、後日自己負担分の約33万円を現金そのもので返すといった事例がありました。

もちろん、補助金を利用して仕事を発注した結果、相手企業が自社の商品やサービスを購入するなど、実際の商取引が相互に生まれることは、むしろ地域経済の活性化につながる望ましいことです。あるいは、取引相手との関係を強化するための正当な接待なども通常の商慣習の範囲内であり、問題はありません。

規制の趣旨として問題視されたのは、「実態の伴わない現金の還流」など、単に補助金を現金化するような行為でした。このような不適切な取引が一部で見られたため、ウェブ関連費の申請額が制限されるようになったのです。

ウェブ関連費から「リアル集客」への方針転換とその理由

ウェブ関連費に規制が設けられた背景には、もう一つ重要な理由があります。それは「地域経済の活性化」という観点です。

ホームページ制作費用は主にウェブ制作業者にお金が集中しやすく、地域経済全体への波及効果が限定的になります。これに対して、看板設置工事や店舗改装、チラシ・パンフレット作成、地域イベントの開催などの「リアルな販促活動」は、地元の業者や地域経済に直接お金が回ることになります。

例えば、看板設置工事であれば地元の看板業者や工務店に仕事が生まれます。店舗改装であれば内装業者や設備業者が潤い、チラシ作成であれば地域の印刷会社や配布業者に経済効果が及びます。このように地域で実際のお金が動くことにより、消費の拡大や地域経済の活性化が促進されるため、こうしたリアルな施策がより推奨されるようになったのです。

また、補助金ではパソコンやコピー機、タブレット端末のような資産性・汎用性が高い設備の購入は認められていません。これらの機器は一度購入すると資産としてストックされ、消費としての経済波及効果が薄くなるためです。そのため、購入後に消費として明確に地域にお金が循環するような経費が推奨されています。

現在の持続化補助金で推奨される販促活動の具体例

現在、持続化補助金では地域経済に波及効果の高い以下のような活動が推奨されています。

店舗改装や内装工事、設備更新工事（地元業者への発注）
販売促進のための看板設置・リニューアル（地元の看板業者を活用）
展示会・商談会への出展（ブース設営費、装飾費、交通費・宿泊費など）
チラシ・パンフレット・DMなど販促物作成（地域の印刷業者に発注）
地域イベントや販促セミナーの開催（地元の施設・イベント業者を活用）

一方で、ホームページ制作やSEO対策、ネット広告、SNS運用などウェブに関連する経費も、あくまでも全体経費の4分の1以内なら認められています。ウェブ活用自体は販路拡大に非常に有効であり、完全に否定されたわけではありません。ただ、補助金の本来の目的である「地域経済活性化」や「リアルな販促活動」をより重視する方向に方針転換されたということです。